新しいフォース分光法を開発し、力学的な原子操作の機構を解明することに成功した(2006年の Phys. Rev. Lettに掲載)
Si(001)表面の最安定構造は、c(4×2) 非対称ダイマー構造とされてきた。しかし、極低温において特異なp(2×1)対称ダイマー構造が現れるという実験結果が報告され、その原因は不明であった。本研究では、p(2×1)構造の出現起因を解明することを目的として、5Kで動作する超高真空・非接触AFMを用いて、探針・試料間の相互作用力がどのように影響するかを研究した。対称ダイマー構造の出現原因は、非対称lowerダイマー原子が探針との強い相互作用によってフリップされ、非対称upperダイマー原子に遷移するためであることを発見した。また、探針・表面間相互作用により非対称ダイマーが基底状態から励起状態へと変化し、凍結されたためであることを解明した。これは、探針・表面間相互作用を変えることにより、表面の構造を“reading”したり、“writing”したりできることを世界で初めて示した重要な成果である。この成果は、2006年の Phys. Rev. Lett に掲載された。DOI: 10.1103/PhysRevLett.96.106104 (図)